norika_blue

1999年生まれ

Quotes and musings (18)

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写真は、母がたまに買ってきてくれるフルーツのパウンドケーキ。これに熱々の紅茶が本当に合うんだ〜。冬のケーキ。(久しぶりに写真VSCOで加工してみた)

 

おれの墓で踊れ / エイダン・チェンバーズ

 

 

この本を読んだ後かなり長文の感想を書いたんだけど今読んだらかなり恥ずかしかったからとりあえず保留。この本は高校生の課題図書では。でも「課題図書」にしたとたん一定の魅力が失われてしまうのよね。特に高校生とかに対しては。少なくとも私は高校生の時にこの小説に出会いたかったよ。でもそしたら今とは別の感想をもってただろうし、今 (と言っても2021年10月)読むこともなかったのかもだし、今読めて今の感想が持ててよかったのかも。

 


・「我々は、ふりをしている通りのものであるから、何のふりをするかは慎重に決めねばならない」

ー カート•ヴォネガット

 

 

 

・オレはまだ、そんな確実な墓場に向かって旅立ちたいと思うほど人生に飽きてはいないと判断した。死には興味がある。死ぬことにはない。

 

 

 

・オレは自分のことをつまらないのらくら者だと思っているから、きっとつまらないのらくら者みたいな態度をとっていて、その結果、つまらないのらくら者になってしまうのだ。

 

 

 

・オレがものごころついて以来、ずっとほしがっていたものを言葉にしてくれていた。お互いのためならなんでもする、徹底した、一人で二人、二人で一人の、とことん忠実でいつもそばにいてくれる友。

 

 

 

・オレが魅了されたのは、自分以外に初めて知る、執念にとりつかれた人間だからだった。しかもそれだけにとどまらなかった。一つのことにしか見えない性格をしていたのだ。執念があるのみならず、それに全身全霊を捧げていた。

 

 

 

・ニールのおかげで、自分が心の友に求めているのは、ぬくぬくした楽しさだけではないことに気づいた。

だからといって、その余分な何かというのがなんなのか、言葉にできたわけでもなかった。ニールのあと、十四になってもまだ。自分の手を切ることと、血と、友達の傷ついた手をつかんで永遠の誓いを立てることを別とすれば。

 

 

 

要約↓そのままの文ではない。

・欠けている何かについて知ったのは、バスターに出会ったとき。Having sex with him. これを学んだことによって、心の友のなんたるかに関するオレの理解の、抜け落ちていた部分がはめこまれた。

 


・ダビデとヨナタンの愛が、聖書の言葉を借りれば、「女の愛に勝るものであった」との情報を発見した。

オレの血はこんどこそかきたてられた。いったい何を見つけてしまったのだろう?

 

 

 

・何もかも本能的なのだ。あたかも、バリーが何か、こういう反応の引き金になるのを持っていたかのように。とはいえ、自分がそういう演技をしているのは感じている。演技を傍観している感すらある。

それだけでなく、楽しんでいる。バリーに何もかもゆだねるのが面白くてたまらない。救出されるにはどうしたらいいか、バリーは教えてくれる。オレは言われたことをすぐにきっちりやる。まるでリモコンに動かされているみたいに。その時の気持ちを、経験したことのない人にどう説明すればいい?そうだな、バスターがラグビーをするのを見物していた頃、たくましい運動選手どもが、お互いの息が完璧に合った瞬間に酔いしれるのを見たことがある。まるで一人の人間になった気分だったと、みんな言っていた。後になって、雄牛のように豪快なあの調子で大笑いするのだ。オレはよく、どういう気分なのだろうと考え、ひそかにうらやんだものだった。救出のこの瞬間に覚えている。存在のはざまにいるような感覚も、あれと同じなのだらうか?オレにはわからない、その時はまだ。わかるのは、胸の中がほんわり温かいことだけだ。

 

 

 

・見れば見るほど好きになる。大いなる難問の一つだ。たった数分で、どうして自分がある人間を好きなことがわかるのだろう?この相手のこたあまりにもすばやくそう思えるのに、毎年すれ違う何百•何千もの人のことは、そう思えないのはどうしてだ?ずいぶん考えてみたが、いまだに見当もつかない。なぜかというと、顔つきや体つきはもちろん、生き方が気に入ってさえ、ある人間に魅力を覚える理由にはならないからだ。何か別のもの、いつまでたってもこれと指摘できないものがある。好きになったとわかる。それだけのこと。それがあの朝起きた。

 

 

 

・世の中には、知ってるのに知らないことがある。現実的な意味を持たないのだ。それまでも、人が死ぬことは知っていた。だがその日初めて、自分の中にいなくなる日がいつかぼくにも訪れること、いつそうなっても不思議はないことが急にわかり、実感できた。

 

 

 

・なぜそんなにヴォネガットが好きなのか聞いてみた。ハルは、人生に対する見かたとユーモア感覚のせいだと答えた。

 

 

 

・気持ちを言葉で表現するのが上手は少年ね、自己規制せずに喋っている時は、熱意がよく伝わってくる。(私も楽しんでいた。

 

 

 

・「おれが言ってるのは自分のことなんだ。生きているのに、親父がそばにいないこと。死に関して、人が本当に動揺させられるのはその点だけだから。いてほしい人がもうそばにいなくなること。けど、おまえが気にしてるのは、死という発想そのものだ。違うか?」

「まあね」

 

 

 

・一緒にいる限り、時間はどうでもよく、オレたちのやっていることもどうでもよかった。何かしても、一緒に何かしたかったからというだけの理由で、必要があってしたことなんか一つもない。絶対的なこと一つだけ。二人が一緒をいること。

 

 

 

・「ハムレットの悩みだよ。父親の幽霊が『わしを忘れるな』と言うだろう。けど、思い出せないのさ。だからあんなに罪悪感がある。(中略) ハムレットがおかしくなりかけているのは、自分の罪悪感のせいなんだよ。

さっきの女が泣いてたのも、それなんだと思う。あの女は知ってたんだよ。思い出せないのに思い出すべきだと思う気持ち。いや、ある意味じゃおぼえてはいるんだ。だけど顔が浮かんでこないし、思い出してももう取り乱さない。それで罪悪感を覚える。

 

 

 

・自分でなくなるって人はよく言うけど、まさか本当のことだとは思わなかった。そういうことが本当にあるとは。起こりうるとは。だが起こりうるんだ。オレに起きた。もう一つ、正気を失うっていう言葉も聞く。オレがそうだった。体から失せた正気が、逆上してるオレを見てた。最初から最後まで、冷たくて無感動な正気のオレが、頭がどうかして狂いかけてるオレを見つめてた。

 

 

 

・狂ってるからじゃなくて、狂ってるとわかっているのに自分しかどうにもできないことに、もう耐えられなくなるから。誰かと話す必要がある。ひとりじゃ整理できない。

 

 

 

・この全てをオレは、前もって考えることなく口にしていた。あたかも何かがたったいま、どこかの膜を突き破り、その裂け目からこうした言葉がこぼれ出たかのように。

 

 

 

・「あなたはすごくいい子よ、ハル。でも人を食べつくすことがある。」

「ハル、本当のことを言えば、あなたが好きになったのは顔と体だけで、そこに自分が見つけたがってる通りの人をあてはめちゃったの」

 


ーー

巻末

 


書くことでの再生 / ひこ•田中

 


バリーにとっての自分の価値を確かめるために、家の狭い浴室で自分の美しい体をバリーの視線で見ようと試みたのともつつみ隠さず書いています。それでもハルは満足できません。「言葉が正しくない。とにかく正しくない。オレが言わせたいことを言っていない。うそをついている、真実を隠している」「意味は言葉の陰に隠れてしまっている」と思えてしかたがないのです。「言葉が完璧に正しいことは絶対にない」と。(中略) 辞書は言葉の鉱脈だ。掘ればあたる。だが何も言ってくれない」とも思います。

(中略)

「言葉がというのはなんてすごいんだろう!たったひとことにこれだけの意味がある。それでも何も伝わらない」と書き付けます。

言葉は様々な意味を持っていますが、それでも、気持ちを、感情を正確に表すにはまだ足りません。書いても、書いても、本当の思いには届かない言葉。しかも、届かないことも言葉で書くしかない言葉。ですから言葉は、仕草や表情や声色など他のコミュニケーションの助けを借ります。ところが書く行為は、何かが足りない感じがなかなか拭えないのです。しかし言葉にならない思いや感情も、言葉を使って何度も言い換え、表現しようとする行為によって、次第に明瞭になり、言葉に還元できるものとして、心の中に住処を見つけるようになります。