norika_blue

1999年生まれ

Quotes, musings (13)

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(夏の終わりの晴れた天気と、建築にかかる太陽の光)

 

こばなし : この間久しぶりに代官山蔦屋書店に行った。Tyler Mitchell の写真集 "I Can Make You Feel Good" を手にとってページをめくる。インスタグラムとか、オンラインで写真をみることが普段ほとんどだからこそ、紙媒体で写真をみれることに贅沢を感じる。他にも気になっていた写真集をパラパラみてたら、あっという間に時間が過ぎた。最終的に、どれを買うかはまた今度決めようと諦めて、文庫本を何冊か買って帰った。そのうちの一冊がこの「サラバ!」だ。この日は上巻だけ買ったけど、そのあと中巻と下巻も買った。

 

サラバ! / 西加奈子

(上中下巻まとめて)

 


・とことんまで中立であろうとすると、人間は輪郭がなくなるのだと、そのとき学んだ。

 

 


・自分の好きなものを、恥じることなく、まっすぐな目でたたえることの出来る須玖は、とても格好良く見えた。

 

 


・おばさんの芸術を愛する様子、そしてそれを決してひけらかさず、ただ愛によってのみ突き動かされている様子が、とてもよく似ているのだった。

 

 


・「いろいろな解釈があるけど、私たちにとってユダヤ教は、生涯、神を探求し続ける宗教なの。神とは何かって。神と人間が対等であるっていう考えもあるし、神様を信じすぎるなっていう説話もあるくらいなのよ。」

 

 

 

・「大好きなあなたに、こんなひどいことをしたから、その代わり、私は絶対に幸せになる」歩には信じられへんことかもしれへんけど、きっとそれが、お母さんがKさんに言える中で、1番誠意のある言葉やったんやと思う。

 

 

 

・お父さんは、食べへんくなった。食べるものを極限まで減らして、それでもお腹が空くと恥ずかしかった。

 

 

 

・どんな出来事の陰にも日常があるのだと、いつかどこかで読んだ言葉を思い出した。

 

 


・また会う僕たちは、それそれがまた、大きな化け物を背負っていることだろう。僕たちが出会った時間、出会った人、出会ったもののすべてを。

 

 


・小説を書きたい、と思ったのは、カイロから戻る飛行機の中だった。正確に言うと、僕は「化け物を書きたい」と思った。僕たちと共にある化け物。消えた、掴めないと思っても、常にそこにある化け物。きっと忘れてしまったことばかりで、だから白いのだが、でも絶対にある、あの化け物を。それを書くことで、少しでも留めておきたかった。化け物のすべてを残すことは出来ないが、その輪郭くらいは、残すことができないだろうか。こうしている間にも、化け物はどんどん体積を増し、形を変えているはずだった。そう考えるといてもたってもいられなくなった。

化け物を残したい。

トランジットでドバイに着く頃には、それを残す手段を、言葉以外で見つけられないでいた。僕たちが簡単に失ってしまう言葉は、でも、言葉として発した瞬間、何かに命を与える。発した刹那に消えるが、残るのだ。僕は僕の言葉を持っているうちに、書きたかった。一刻も早く書きたかった。

 

 


・小説の素晴しさは、ここにあった。何かにとらわれていた自身の輪郭を、一度徹底的に解体すること、ぶち壊すこと。僕はそのときただ読む人になり、僕は僕でなくなった。そして読み終わる頃には、僕は僕をいちから作った。僕が何を美しいと思い、何に涙し、何を忌み、何を尊いと思うのかを、いちから考えなおすことが出来た。

 

 


・世界に対して示す反応が、僕の場合「恐怖」であるのに対し、姉は「怒り」であるように思う。姉は産道ですでに、世界の不穏な気配を察したのではあるまいか。そして生まれ落ちる前から、もう怒っていたのだ。怒りのような積極的な感情がなければ、2時間も踏ん張っていられはしないだろう。