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1999年生まれ

Quotes and musings (25)



白書 / ジャン・コクトー

山上昌子訳

 


15

父は沈みがちな、魅力ある人だった。その愁色は妻の死に始まったことではない。幸福な時でも父は沈みがちだったので、私は、そこには喪の悲しみよりもっと深く根ざした何かがあるのでは、と想像していた。

 

 

 

 


16

私はリセ・コンドルセの中学三年生になった。そこでは官能は抑制もなしに目覚め、雑草のように伸びていた。

 

 

 

 


19

私たちは皆、半ズボンをはいてはいたが、ただ一人、大人の脚をしているダルジュロスだけが「裸の」脚なのだった。

 

 

 

 

 

 

19

宿命は変装する。そして人に自由だという幻想を抱かせておき、結局のところは、いつも同じ罠に落とすのだ。

 

 

 

 


25

どういう行動をとればよいかは奇跡が教えてくれると当てにしていた。

 

 

 

 


25

美の特権は絶大である。美は、美のことなどおよそ気にかけていないような人々にまで力を及ぼす。

メモ : 同じような文、「恐るべき子供たち」にもあったような。。。

 

 

 

 


31

(娼館に向かうところで)

革張りのドアを前にすると、当然ながら年齢相応の気後れに再び襲われた。泳ごうとする人が冷たい水の前でためらうように、私たちはそのドアの前でためらい、行ったり来たり、歩き回った。

 

 

 

 


31

子供と娼婦ほど人を気後れさせるものはない。あまりに多くのことが彼らと私たちを隔てている。

 

 

 

 


53

ダンスのおかげで前置きの気まずさは避けられ、見知らぬもの同士が互いの腕の中に身を投じる。ダンスは愛の下準備なのだ。

細かいウールや愛嬌毛でふんだんに飾られたような音楽に合わせて、私たちはワルツを踊った。反り身になった体は性器が密着し、厳かな横顔は目を伏せて、足より遅れて回転する。足の方は馬の膝さながら、小刻みに激しく動くかと思えば時折立ち往生する。空いている手は、庶民が酒を一杯やったり、それを小便に流したりする時に見せる優雅なポーズを取る。春の目眩が肉体を興奮させる。そこには枝が生える。硬いものが押し合い、汗が混ざり合う。こうして一組のカップルが、丸いガラスの覆いに入った置き時計と羽根布団のある、ホテルの部屋へとむかうのだ。

 

 

 

 


63

私の内では心と官能があまりにも混交しているので、片方だけ用いてもう片方は置いておく、ということは困難に思える。そのせいで私は友情の域を出てしまうのである。また、行きずりの関係を恐れているのもそのせいで、私はそんな関係で片思いに陥る危険があるのだ。美というものに漠然と苦しむこともなく、自分が何を求めているのかよくわかっていて、悪徳に磨きをかけ、金を払ってそれを満足させることのできる人が、私はしまいには羨ましくなった。

 

 

 

 


67

彼らは裸になり、新品のスーツを丁寧に掛ける。よそ行きの服を脱ぐと、各々、職業によって魅力的に体が変形しているので、仕事が何かは見当がつく。

 

 

 

 


105

社会の悪徳が、私が自己を撓めぬことを悪徳とする。私は身を退く。フランスでは、ガンバセレスの素行とナポレオン法典の長命のため、この悪徳によって徒刑場送りになることはない。しかし私は、大目に見ようという扱いは承服できないのだ。それは、愛と自由に対する私の愛を傷つける。