norika_blue

1999年生まれ

Film Diary : ナイト・オン・ザ・プラネット

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今日のFilm Diary は、ジム・ジャームッシュ監督の、「ナイト・オン・ザ・プラネット」。これから観るひとがいたら、これはぜひとも夜に電気を全部消して観てほしいなと思う。なかなか眠れないひとに送りたいそんな映画である。夜タクシーに乗る度に思い出す、ジム・ジャームッシュ監督の作品の中でも最高の映画だ。


簡単なあらすじ

ロサンゼルス・ニューヨーク・パリ・ローマ・ヘルシンキの同じ夜、タクシーと乗客の間に起こった出来事。


※今回のfilm diaryは、まだこの映画を観ていないひとには、完全にネタバレになってしまう。(だからぜひこの映画を観て、それから読んでくれたらとても嬉しい) (ネタバレを気にしないひとはこのまま読んでください) 5つの物語の中から、3つ選んでここには書く。 

 

・パリ

盲目の女性が言った「映画を感じるのよ、あなたにはわからないでしょうけど。」というセリフ。「皮膚を全部つかって感じるの。」というセリフ。もちろん私がそれと全く同じ感覚があるとは思えないが、それでも彼女が言おうとしていることを少しはわかる、ように思える。映画は決して見るだけのものではないから。彼女の服のセンスはとても高尚だったし、爪も綺麗に塗ってあったが、誰が選んでいるのだろう。それを疑問に思った。また彼女のいう「肌の色なんてどうでもいいのよ。人参の色だろうが青だろうがどうでもいいのよ」は、他の誰よりも強い。なぜならそこにはそのセリフを言う人々にたまに感じられる一種の自戒のようなものが全く感じられないからである。彼女にとっては、ほんとうに、どうでもいいのである。


運転手は夜の8時から朝の8時まで働いている、と言っていた。世界のほとんどが眠っているときに街に出て道を走るというのはどのような感覚なのだろう。彼の「1日」に対する始まりと終わりの概念は私のそれとは違う。朝から1日が始まるのは、全員じゃない。


ヘルシンキ

この映画それぞれの物語に魅力があるが、特に最後のヘルシンキのストーリーについて、エンドロール中もずっと考えてしまった。自分の娘を生後すぐに亡くしたミカ。「彼女が死ぬことが避けられないから愛することを避けた。でも彼女は愛なしでは生きられない。愛することを決めたとき、愛情が体からほとばしった。でも彼女は死んでしまった。」ミカは、哀しくて、哀しくて毎日の自分の命さえ、細い糸でなんとか繋げているような日々だろう。彼の周りにいる人たちができることは、どんな言葉もミカを癒すことはできないことを知りながらも、彼のそばにいてそっと抱きしめてあげることだけだろう。


それまで、自分に起こった大変なことについて声高らかに話していたお客の2人は、ミカの話を聞いてから彼の哀しみの一部を共有していたけれどそれはあくまでもタクシーの中にいる時だけ。もしくはその後時たま思い出すくらいだろう。でもミカは、意識の奥深くまで侵食してしまうような鋭くて大きい苦しみや哀しみを持ってこれからも生きなくてはいけない。ミカ以外のお客にとっては、それは「タクシーの中で聞いた1つの話」で、ミカにとっては「これからもずっと心の片隅に存在する悲しみ」であるというその対比の描き方が、とてもリアルだった。一生治ることはない傷が誰かの心につけられるようなことが今日も地球のどこかで起こっている一方で、ベスト・デイ・オブ・マイ・ライフを送っている人もいる。そうやって毎日が過ぎていくのは確かだし、そうだからこそ、ひとりひとりがもつストーリーを大切にしたいと思う。ひとりの人がこの世界が回っている中で小さな小さなパートであるのは事実だけど、それは決して小さな存在というわけではない。その両方のことを忘れないで生きていたいな。


・ニューヨーク

ヨーヨーのような優しいお客さんばかりだといいが…money is not important. I need them, but it’s not important. I’m a crown. というヘルムット。人を笑顔にすることが重要なのであってお金なのではない、と彼はいう。彼の人生をもっと知りたい。この映画に登場する人は、全員わたしにその人生をもっと知りたくさせた。ジム・ジャームッシュは、なんて魅力的な登場人物の描き方をするんだ。。。映画監督として、登場人物を魅力的に描けるというのは素晴らしい才能…ヨーヨーとアンジェラ?の会話もファックだらけだけど、愛おしい。ヘルムットが彼らをみて、家族はいいものだ、と言っていたのもわかる。ヘルムットは家族がない、と言っていた。喧騒としていて言葉も通じないような場所にいるのに、心の戻る場所になるようなファミリーすら故郷にいない。それでも誰かを笑顔しつつげる(道化師であり続ける)、そんなヘルムットにとってどうか世界が優しくありますようにと願わずにはいられなかった。

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夜に観て、しかも途中から電気を消して観たのでまるでタクシーの中で彼らと共に夜の街を走っているような気分になってとても楽しかった。

 

どれも、彼らにとって忘れられない夜になるだろう。いやもしくは、毎日が忘れられない夜なのかもしれない。でもこのような夜ばかりで、逆に忘れられながら時間が経っていくのだろうか。そう思うと、私のこの毎日ももっとpay attention して過ごさないとその面白さを見逃してしまうぞ、という気持ちになった。