norika_blue

1999年生まれ

永遠の映画 ‘20 【1】

2020年は、全体的にあまり多くの映画を観れなかったけど、それでも本当に素晴らしい映画にたくさん出会った。

 


毎回そのたびにほんと確信する。やっぱり映画は一生もの。観ている約2時間だけで終わることは絶対にない。ひとつの映画を観ると、視点だったりリズムだったりナラティブだったりの色々な要素が体に取り込まれて、それを自分なりに咀嚼して、その身体でその瞬間からの人生を生きることになる。過去と現在と未来を繋げていく行為。だから私にとって映画を観ることは、今までの自分の人生をどう認識して、これからどんな人生を歩んでいきたいのか考えることでもある。

 

ANYWAY,

 

 

以下2020年に観た映画で特に印象に残っているもの。写真はピンタレストから使わせてもらった。

 

 

① 燃ゆる女の肖像 (2019) / 監督: セリーヌ・シアマ


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Céline Sciamma did it again.

 

素晴らしかった…

 

見られている、欲望されている、という「対象」としての自分だけでなく、自分が見る、欲望するという主体的な行為を通して、自分を再生していくということ。「描く」者と「描かれる」者の関係性によって変わる肖像画。この映画を観てから、今までは正直じっくり観てこなかった肖像画への見方がかわった。

 


芸術への愛。他者と歌を歌うこと、音楽を聴き自分の呼吸のリズムが変わっていくということ。

 

 

あと、セリーヌ・シアマは人と人の間に存在するものを描くのに抜きん出て秀逸だ。親密さ、触れる時にだけ変わる時間の速度や空気の張り、そして愛も。こんなにも素晴らしい映画に出会えたことに本当に感謝しかないし、何度でも観たい。カンヌで脚本賞を受賞している本作だけど、1回目観た時は、全てのセリフを追うことができなかった。でも2回目観たとき、決して多くはないひとつひとつのセリフのあまりの力強さに圧倒された。きっと3回目も4回目も新しい発見があるんだろう。一生の映画。

 

 

 

② Never, Rarely, Sometimes, Always (2020) / 監督: エリザ・ヒットマン

 

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これはとてつもない絶望の中の希望の映画、連帯の映画。中絶のための適切な医療処置を受けることができずに2012年に亡くなった、アイルランドに住んでいたインド人女性サビタ・ハラパナバルさんの事件から、監督は構想を得たらしい。自らの身体に対して決定権を持っているということの重要さ。それが社会で保障されているということの必要性。

 


世界に、希望なんてもはやないように思えるときがある。そんな世界でどうやって生きてけばいい?淡々と描かれる恐怖、性的な目線で見られること、扱われることの恐怖。バスで腕をポン、っと触れられただけで目線をあげるのが怖くなる。そういう現実が映画として映っているということ。それだけでも意味がある。淡々とその様子が描かれるけれど、それは現在の社会状況をただ認めて受け入れているわけではなく、その描き方を通して、どれだけそのような恐怖が日常化しているのかを浮き彫りにしている。そうやって現実が誇張されることなく、映画を通して描かれることは、実際にそのような恐怖を日々感じている人々にとって、恐怖の孤独をやわらげることでもある。

 

 

 

そして、この映画は何よりも、私にとって「連帯」の映画だ。シスターフッドの映画。(ここでのシスターは文字通りの姉妹という意味ではなく、概念としてのシスター。)「やってあげよう」という一方通行の奉仕ではなく、相手が困っていたら迷いなく手を差し伸べ共に進もうとするそんなシスターたち。女性同士の対立が取り上げられやすい世の中だけど、こういうシスターフッドは確実に存在する。そんな女性たちに私も今まで少なからず出会ってきたし、私自身も絶対にそうでありたい。

 

 

 

③ イサドラの子供たち (2019) / 監督: ダミアン・マニヴェル

 

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秋の、感覚がいつもより澄まされて、世界をより肌の近くに感じる季節に、この映画をみれてよかった。

 


「踊り」と「生」の近さについて、と書こうと思ったけどいやもはや踊りは生そのものなのかもしれない。物語を通して魂が繋がることについて。悲しみと踊り。

 


「もしこれがコトバで伝えられる種類のメッセージなら、踊る意味はないかもしれないけど、これはそういう種類のメッセージなのではない。むしろ、コトバに翻訳したのではウソになってしまう種類のメッセージなのだ。(G.ベイトソン)」

 


「技芸には、技芸ごとに特異な、それ独自のロジックがあり、それ特有の(メディア)メッセージがある」

 

 

 

④ジョン・F・ドノヴァン の生と死 (2018) /

監督: グザヴィエ・ドラン

 

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待っていた…本当に待っていた…グザヴィエ・ドランの新作。

 


俳優の演技の卓抜さと音楽センス、そして映画やアーティストに対しての敬意が溢れる作品だった。子供の頃に大好きでずっと観ていた映画やドラマのことを思い出す。テレビに吸引されるように、その映画に自分の一部を変えられてもいいと思うくらい自分の全てをその作品にさらし、夢中になっているとき。私もそんな子どもの1人だったし、きっとそういう記憶を持っている人は多いんじゃないのかな。

 


そして、その作品が子どもたちの生き方に影響を与えていくということ。そしてその子どもが大人になったとき、また新たに子どもたちに影響を与える。

 


物語の構成は確かにまとまっているとは言えない部分もあったけど、確実に私にとって重要な一作となった。それに音楽シーン(特に最初のアデルのRolling in the Deepのオープニング) が素晴らしすぎて、それをスクリーンで観たいがために2回観に行った。

 

 

 

⑤ ミステリアス・スキン 謎めいた肌 (2005)

/ 監督: グレッグ・アラキ


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「青春映画」というとき、色々な映画が頭をよぎる。そのうちのひとつがこの映画。

 


「青春」には色々な要素がある。(と思う)。

 


輝かしく世界のひとつひとつの事象が宝物みたいに美しく思えるような瞬間だったり、何があっても彼らが世界にいるかぎりきっと大丈夫だと思えるほどの友情だったり、未来への期待と夢だったり、希望だったり。

 


青春時代が終わったからと言って、こういう瞬間がなくなるわけじゃ全くないけど、青春時代に確かにあった、そんな瞬間たち。素晴らしく幸福な思い出。

 

 

 

でもそれだけじゃない。

 

 

 

小さい頃に受けたトラウマや傷が膿み、自分の意思と共に自分を確立していきたいのに別の何かにコントロールされているような感覚になったり、その傷を治癒したくてもその方法がわからなかったり、過去の自分と現在の自分を比べてその狭間で擦り切れそうになったり、未来への絶望と不信だったり、世界には生きるに値するものがあると思いたいのと同じくらい、その残酷さにうちしがれそうになったり。

 

 

 

主人公2人がうけたトラウマは、犯罪行為によるものでひとまとめにして語っていいものではないけれど、小さい時に受けたトラウマがある人にとって、この映画はあまりにも忘れられない映画になると思う。

 

 

 

以下、主人公2人のうちのひとりNeilの言葉を書きたい(Bryan はもうひとりの主人公)。

 

 

 

“I wanted to tell Bryan it was over now and everything will be okay. But that was a lie. Plus I couldn’t speak anyway. I wish there ware some ways for us to go back and undo the past, but there wasn’t. There was nothing we could do. So I just stayed silent. And tryna telepathically communicate how sorry I was about what had happened. I thought about all the grief and sadness and fucked up suffering in the world and it made me wanna escape. I wish with all my heart we could just leave this world behind, rise like two angels in the night and magically, disappear.”


永遠の映画 '20 ② に続く