norika_blue

1999年生まれ

Quotes, musings (10)

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(買った本についてきたしおり) 

 

謎めいた肌 / スコットハイム 仔犬養 ジン訳

 


・父親に対するあらゆる感情をうめた深い穴を掘りおこして、そこからとりだした怒りや、憎しみや、やりきれない気持ちを全部ひとつの鍋に放りこんでかきまぜ、烈々と燃え上がる感情の融合物を、父親の顔面にぶつけたかった。

 

 


・それは降ってわいたようにあらわれた、絶望的で、衝動的で、犯罪に近い愛だった。

 

 

 

コンビニ人間 / 村田沙耶香

 

 

・今の「私」を形成しているのはほとんど私のそばにいる人たちだ。(中略) 特に喋り方に関しては身近な人のものが伝染していて、今は泉さんと菅原さんをミックスさせたものが私の喋り方になっている。

 

 


・何かを見下してきる人は、特に目の形が面白くなる。そこに、反論に対する怯えや警戒、もしくは、反発してくるなら受けてたってやるぞという好戦的な光が宿っている場合もあれば、無意識に見下しているときは、優越感の混ざった恍惚とした快楽でできた液体に目玉が浸り、膜が張っている場合もある。

 

 


・差別する人には私から見ると二種類あって、差別への衝動や欲望を内部に持っている人と、どこがで聞いたことを受け売りして、何も考えずに差別用語を連発しているだけの人だ。

 

 


・そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。

 

 


・店長は、使える、という言葉をよく使うので、自分が使えるか使えないか考えてしまう。使える道具になりたくて働いているのかもしれない。

 

Quotes, musings に載せてる文は必ずしも賛同しているわけではない ("本を読む"のポストに書いたように、、)。ただ、ある思いや感情に善悪をつける前に(そもそも思いや感情に善悪はつけられるのか?)、それらの存在自体が書き記されていること、そのことを書き留めておきたいと思える文がある。「コンビニ人間」のこの最後二つの抜粋もそんな文だ。

 

 

 

若きウェルテェルの悩み / ゲーテ 高橋義孝

 

 

・二人の交際はすごく微妙な感覚と最も鋭い理知とが織りなす永遠の織物だった。

 

 


・しかしねえ、誤解されるというのがやっぱり我々人間の運命なんだ。

 

 


・公爵はぼくの心よりも、ぼくの理知や才能のほうを高く評価しているんだが、このぼくの心こそはぼくの唯一の誇りなのであって、これこそいっさいの根源、すべての力、すべての幸福、それからすべての悲惨の根源なんだ。ぼくの知っていることなんか、誰にだって知ることのできるものなんだ。ーぼくの心、こいつはぼくだけが持っているものなんだ。

 

 


・彼女がぼくを愛してくれて以来というもの、ぼくはどれほどぼく自身を尊ぶようになっただろう。

 

 


・さあそのときから太陽も月も星もぼくにはどうでもよくなってしまったんだ。昼も夜もあったもんじゃない。全世界がぼくのまわりから消えうせて行く。

 

 


・だってわかりきっているじゃないか、どんな一般的命題にだって例外というものはあるってことは。

 

 


・母はぼくを世の中へ出したがっていると君はいうが、ぼくは笑い出しちゃったよ。今だってぼくは世の中に出て立派にやっているじゃないか。えんどうを数えようと、隠元豆を数えようと、結局同じことではあるまいか。

 

 


・ウィルヘルム、愛のない世界なんて、ぼくらの心にとって何の値打ちがあろう。

 

 


・ぼくはぼく自身の内部に引き下がって、そこに一つの世界を見つけ出すのだ。むろん形のはっきりした力強い世界じゃない。予感とおぼろげな欲求ようごめいている世界だ。そうしてそこではいっさいが流れ動いている。ぼくは夢うつつにそういう世界に心たのしく身を投げかけて行くのだ。

 

 


・ウェルテェルの心の中では、不満と不快とが根を次第に深くおろしていき、ますますしっかりとからまり合い、そして、彼の全存在をとりこにしてしまった。精神の調和は完全に破れていたし、その本性の所有するいっさいの力をかき乱す内心の興奮と激情とは、最も忌まわしい結果を招来し、

 

 


・はっきりしたことが何もわからないような場合に、混乱と暗黒を予測するというのが、結局人間精神のさがなのか